※この記事は栄養成分自体の化学的な性質等を示すものであり、ごはんの効能を表すものではありません。
わんちゃんにとってマグネシウムは
必須ミネラルである
そんなこと重々わかっていても
やっぱり気になるのは
摂りすぎは結石の原因
というワードでは?
手作りごはんのために
食材の勉強をしていると
体にいい成分の説明の後に
あげすぎは結石の原因なので注意
という文を見かけませんか?
これはある意味正しいですが
ちょっと説明不足なのでは?
と思っています。
マグネシウムと尿結石の関係性
わんちゃんに多い尿結石は
・シュウ酸カルシウム結石
の2種類
このうちストラバイト結石は
別名
リン酸アンモニウム・マグネシウム
逃げも隠れもしない感じで
思いっ切りマグネシウムが入ってる!
ストラバイト結石の主成分が
マグネシウム
そりゃマグネシウムの摂取がストラバイト結石の原因だって思っちゃうよね。
確かに
マグネシウムの過剰摂取は
ストラバイト結石の危険性を高める
でも・・・
尿結石ができるのには
だけでなく
・尿のpH
・尿の濃度
など複合的な要因が関係しています
中でも一番の原因となっているのが
膀胱や腎臓など
〇尿路への細菌感染(ウレアーゼ産生細菌)
感染により
・尿のpHがアルカリに傾く
ことがストラバイト結石に大きく関与
※原因の8割がこの感染とも言われています
他の原因としては
〇水を飲む量が少なくなること
⇒尿の量や排尿の回数の低下
⇒尿が濃縮し、結石形成リスク高まる
〇不適切なごはん・おやつ
・たんぱく質の過剰摂取
・マグネシウム、カルシウム
リン酸などの過剰摂取
〇尿のpHがアルカリに傾く
◆人の食べ物を与えるなど
不適切なごはんで
尿のpHがアルカリに傾く
他にも
◆満腹時や消化の最中
⇒体内の酸が消化に集中する
⇒尿のpHはアルカリ性になる
つまり
・消化の悪いごはん
などを与えると
消化にかかる時間が長くなり
尿がアルカリ性に傾く可能性。
また
◇わんちゃんは運動すると
乳酸の働きで尿のpHは酸性に傾く。
なので
・太りすぎで動きが鈍い
なども
間接的にストラバイト結石の原因。
このように
マグネシウムの過剰摂取は
ストラバイト結石の要因の一つ
ではあるが
それだけが原因ではない
ということが言えるのです。
少し脱線。ストラバイト結石の予防について
さて、ここまでを振り返ると
ストラバイト結石を防ぐには
マグネシウムの制限より
尿路感染を予防する方が重要
ということが言えると思います。
なんと14%ものわんちゃんが
生涯の内一度は
尿路感染のひとつ「膀胱炎」
になると言われています。
尿路感染の多くが
⇒細菌が尿路をさかのぼる
⇒感染、炎症がおきる
というもの。
そのため
・尿道が太く短く
・体の仕組み的に細菌が侵入しやすい
〇女の子の方が
尿路感染症のリスクが高くなります。
〇また肥満の子では
尿の出口にも余分な皮膚があるので
ウンチやおしっこの細菌が増えやすい環境
そのため
さらに尿路感染症のリスクが高まります。
尿路感染で一番気を付けたいのが
〇肥満
ということは
ホルモンの影響で
・食欲の増進
・代謝カロリーの減少
による肥満リスクの高まる
避妊手術後
は特に注意が必要ということ。
また
男の子は女の子に比べ
ストラバイト結石のリスクは低い
ですが
尿道が細く長いので
結石が詰まる危険性が高い。
結石が詰まって完全に尿が出ない
尿路閉塞は
・急性腎不全による尿毒素
など、命に関わる緊急的なもの。
ぼくはなったことないけど、
めちゃくちゃ痛いって聞くね!
栄養バランスのいいごはんと、体重管理もしっかりお願いね!
ちなみに
猫は尿路感染がなくても
ストラバイト結石になりやすい
これは
飲み水を積極的にとらないので
尿が濃縮されやすいから。
ドライフードでは特に注意が必要です。
悪者なんかじゃない!マグネシウムはわんちゃんの必須栄養素
ストラバイト結石のおかげで
悪者扱いされることもありますが
もちろんマグネシウムは
犬の健康には欠かせない栄養素
そもそもマグネシウムってなんだっけ?
マグネシウムって聞くと
なぜだか花火を思い出す
なぜだろう・・この火のイメージ
って
理科の実験でありましたね
(激しい光)を発して燃え
酸化マグネシウムになる
そう!マグネシウムは金属
この燃やすと明るくなる性質を利用し
・昔のカメラのフラッシュ
・花火で紅色と合わせピンクを作る
他には
・豆腐を固めるにがりの主成分
・植物の光合成に必要な
クロロフィルの中心に存在
金属としては
アルミの3分の2という軽さを買われ
合金として
・ノートPC
・車のエンジン部品
などに利用されています。
意外と身近な存在でしょ!
様々な用途を持つマグネシウム
体内ではもっと多彩な働きを担います
数えきれない!マグネシウムの体内での働き
というのもマグネシウムは
骨の構成成分として有名ですが
体内では
・筋肉・脳・神経 40%
・血液中 1%
など全身に存在。
その上で
体内の300以上の酵素を活性化
なので
・神経情報の伝達
・体温の調整
・血圧の調整
など
生命の機能維持に不可欠な存在
中でも重要なのが
糖・脂肪酸・アミノ酸など
エネルギー代謝の酵素反応を助け
ATPの生成に関わる
ということ
ATP(アデノシン三リン酸)は
すべての生物の
・生体物質の合成
・発酵
・発熱
など
あらゆる生命活動に必ず使われるもの
・アメリカ人がドルを使う
ように、すべての活動に使われるため
エネルギーの通貨
とも呼ばれます。
全ての活動に必要なエネルギーは
ATPに一度蓄えられることで
やりとりが可能になるのです。
なので他にも
「エネルギーのカプセル」とか
「エネルギーの乾電池」みたいな例えがあるね
マグネシウムが不足すると、どえらいことになりそうですな
結論から申しますと
欠乏することは滅多にない
のでご安心を
欠乏が考えられるのは
⇒マグネシウムの吸収に問題
・利尿剤の長期使用
⇒マグネシウムの過剰排泄
・無理なマグネシウム制限ごはん
⇐ストラバイト結石治療など
犬のマグネシウム欠乏症では
・筋力低下
・痙攣
・体重減少
・骨の形成に影響
などが見られます。
また
細胞中で、神経や筋肉の興奮性を抑制
していることから
低マグネシウム血症は
・不整脈など
心臓血管系に悪影響
他にも
習慣的なマグネシウム欠乏は
・糖尿病
・高血圧
・がん
などの
リスクを高めると考えられています
逆にマグネシウムを適切に摂取すると、糖尿病とか高血圧・ガンなんかのリスクが減るらしい
手作りごはんに!マグネシウムはどの食材からとるのがいの?
マグネシウムを多く含むのは
海草・ごま・大豆・貝類・魚類・穀類
と言われています。
手作りごはんに使うのはどうかなー
って食材もありますが
色々一応見てみると
青のり | 白ごま | きな粉 |
1400 | 360 | 260 |
牡蠣 | アジ | 発芽玄米 |
42 | 36 | 107 |
青のり食べときゃ大丈夫!
てなわけにはいきません。
多く含まれているとはいえ
ごはんに使うのはせいぜい1g程度
貢献度は低いと言えるでしょう
そこでごはんのメインである
肉を見てみると
鶏むね | 猪 | 豚ヒレ | 鹿 |
29 | 23 | 27 | 27 |
先ほどの食材と比べると
数値自体は低いのですが
例えば一番マグネシウム量の少ない
+さつまいも50g
というごはんでも
AAFCOの定める
マグネシウムの摂取量をクリア
※もちろん他の栄養素はめっちゃ不足
そうなんです!
あれこれ考えなくても
マグネシウムが不足することは
ほとんどない
と考えてもらって大丈夫。
またAAFCOでは
マグネシウム量の上限は定められてない
それは
腎機能の低下などを除き
通常考えられるごはんでは
みたいな事故でもない限り
過剰になることもないから。
ストラバイト結石などで
マグネシウムを制限したいとき
などを食材から外すとしても
肉はしっかり与えて、マグネシウムは
適量摂取する方が健康にいいと言えます
バランスが大切!マグネシウムの吸収について
マグネシウム吸収率には幅があります。
体内のマグネシウムが不足すると
骨からマグネシウムを遊離し利用
という機能が働きますが
その前に
〇摂取量が多い
⇒マグネシウム吸収率は下がる
〇摂取量が少ない
⇒マグネシウム吸収率は上がる
と過剰や欠乏が制御されています。
マグネシウムの吸収率は
・高マグネシウムでは25%
くらいだと考えられています。
生き物の体ってうまくできてますね
また
同時に摂取する食事内容によっても
吸収率は変わってきます
例を挙げると
(ほうれん草・バナナ・キャベツなど)
・フィチン酸によって吸収阻害
(穀物や豆類に多い)
・他ミネラルの過剰で吸収阻害
(カルシウム・リン・鉄・ナトリウムなど)
・ビタミンDで吸収促進!
(魚・特に鮭やタラ)
手作りごはんは、なかなかここまで計算して作れない!
何事もバランスよくを心がけるのが一番
中でもカルシウムとのバランスが大切と言われますが・・・
カルシウムとマグネシウムは
ブラザーイオン
と呼ばれるほど密接な関係
カルシウムの過剰は
マグネシウムの吸収を阻害
血液中には
の割合で含まれます。
なので人では
カルシウムとマグネシウムの
一日の摂取の割合も
2:1が理想とされています。
〇カルシウムは
体内の細胞を出入りすることで
・神経系の伝達
という機能を持ちます。
〇マグネシウムは
そのカルシウム量をコントロール
〇2つのバランスが崩れると
・心臓や血管の収縮が不安定に
⇒不整脈など心臓病や高血圧の原因
となります。
ところが!
カルシウムと言えば
リンとのバランスも非常に重要
AAFCOの基準でも
と定められています。
犬のごはんは肉が中心
=どうしてもリンが多くなる
⇒カルシウムの補強が必要
さて、それに合わせて
マグネシウムまで補強するとどうなるか?
AAFCOの基準値を見てみると
AAFCO基準 | ヒッポ | |
カルシウム | 0.5~1.8% | 0.64% |
リン | 0.1~1.6% | 0.57% |
カル:リン | 1~2:1 | 1.13:1 |
マグネシウム | 0.06%以上 | 0.11% |
カル:マグ | 基準無し | 5.8;1 |
あるわんちゃんのごはんで
AAFCOの基準はすべてクリア
それでも
カル:マグ=2:1には程遠い
これに近づけるには
8gほどの青のりを加える
などという
不自然極まりないごはんの爆誕
もちろん他の栄養バランス総崩れ
最悪マグネシウムサプリの添加
それしか方法はなさそう・・・
色んなフードを調べましたが
くらいの範囲に落ち着いています。
ということでヒッポのごはんでは
△カルシウムとマグネシウムの割合
にはさほどこだわらず
〇AAFCOの基準を優先したレシピ作り
を進めています
2:1で作ろうと思えば作れるんだって。でもマグネシウム量に上限はないって言っても、なんか気持ち悪いでしょ。
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