犬のご飯にMCTオイル!期待される効果は?肝臓への危険性などは?

犬の食材

※この記事は栄養成分自体の化学的な性質等を示すものであり、ごはんの効能を表すものではありません。

MCTオイル=「中鎖脂肪酸」100%の油
主にココナッツなどから生成された、自然由来の植物油です。
「ダイエットオイル」として注目を集め、すでにご存知の方や自分で使用されている方も多いと思います。

人ではダイエットだけではなく、「認知機能の低下の予防」「てんかん発作の改善」など、健康維持に関する効果が認められています。
そこで最近では、これをわんちゃんのご飯にも利用する動きが活発になってきています。

MCTオイルは、人ではその安全性が認められ、50年以上も前から医療の分野でも使われています。
ただ、わんちゃんにおいてはまだまだデータが少ない。

とらのすけ
とらのすけ

その使用量・許容量の不明確さ、特に肝臓に疾病を持つ子への負担の危険性などがあり、ヒッポのごはんでは使用を見送っています。

MCTオイルのここがすごい!健康のためのうれしい効果

健康に関するプラスの要素に注目すると、将来的にはぜひ使ってみたい魅力ある食材でもあります。
犬猫専用の商品もありますが・・・実際のところどうなんでしょう・・・

まずはなんといっても「ダイエット」効果

MCTオイルは他の油より4倍早く分解され、短時間でエネルギーとして消化されるので、脂肪として蓄積されにくい

「脂肪として蓄積されにくい」
この言葉には魅了されますね~

MCTオイル自体に、継続摂取で、脂肪をエネルギーとして利用しやすくなることが報告されていいます。
さらにダイエットとしては、米や小麦など主食を少し減らす「糖質制限」とのセットが効果的。
糖質制限下での体力低下などをを防いでくれるのもMCTの役割。

糖質制限ダイエットの流れ

①糖質制限で体内のグルコース(糖質)が減少
②肝臓のグリコーゲンがグルコースに分解され、利用される
③肝臓のグリコーゲンが枯渇
④体内のタンパク質や脂肪が分解され、エネルギーとして使われる。

この時、筋肉や脂肪に蓄えられている脂肪酸はケトン体となってエネルギー源となる

糖質制限だけでは脂肪減少だけではなく筋肉(タンパク質)も衰えさせる恐れもあります。
そこへMCTオイルをプラス!
他の油は腸管膜内で中性脂肪へ再合成されますが、MCTは水になじみやすいため腸管で吸収されやすく、直接肝臓に運ばれ分解されケトン体を生成。
そのため4倍も早い短時間で効率的にエネルギーを作れるのです。
この早さのおかげで
・「頭がぼーっとする」
・「なんか体がだる重い」が減り、
・筋肉の分解も防いでくれ
=健康的なダイエットが可能に。
またケトン体は満腹中枢を刺激、空腹感も抑えられます。

すごいぞケトン体!認知機能の低下の予防やてんかん発作の改善

先ほどはグルコースの代わりに使われる栄養源として名の挙がった「ケトン体」
特に脳の機能低下の抑制についての研究が進められています。

老化が進行したり、アルツハイマーなどになると、脳はブドウ糖をエネルギーとして上手く使えなくなり、エネルギー不足に陥ります。
で、記憶力の低下などが進行・・・

そんな時こそケトン体!
脳にとってブドウ糖に替わるエネルギー源になり、脳機能低下の抑制に有効だといわれています。
他にも、神経細胞の死滅を防いだり、脳への血流量を増やしたり、セロトニンという幸せホルモンを増やしたり、とその脳に対する役割は広く大きい。

現に投薬でも治らない難治性てんかんに、MCTを活用したケトン食
(極端に糖質・タンパク質を抑え、代わりに脂質を極端に高くするという食事療法)
が有効であるという報告があります。
ただしケトン食は、「栄養内容が厳しいために長続きしない」という大きな問題があります。

また近年、MCTで犬の食事を調整すると、ケトン体の上昇とともに、てんかん発作や行動異常の抑制の可能性が報告されています。
調整は「必要摂取エネルギー量の9%に相当するMCTサプリ」とありますので
体重5kgの高齢犬を例にしますと、
・必要摂取エネルギーは約330kcal/日
・330×9%=29.7kcal/日
・脂質1g=9kcalで計算しますと、MCTオイルを29.7÷9=3.3g/日、使用ということになります。

とらのすけ
とらのすけ

単純にヒッポのごはんにMCTオイルを3.3g足しても、栄養バランスが崩れなかったので、これくらいなら何とか毎日でも続けられそう。

通常、体内にブドウ糖が十分にあるときは、ケトン体はほとんど作られません。
ですがMCTに限っては、直接肝臓に運ばれるので、体内にブドウ糖があってもケトン体を作り出せるのです。
このことからも、わんちゃんの「てんかん発作改善」のために、MCTオイルをいつものご飯にプラスすることは、理にかなっていると言えるでしょう。

あまりご飯が食べられなくなった・・・そんな時にもMCT

考えたくはないですが・・・
高齢により食が細くなり、充分な栄養摂取ができないとき。
病気などで、たんぱく質の制限や、ごはんをあまり食べられなくなったとき。

MCTオイルは、少ない量でも速やかに、効率的にエネルギーを作ることができます。
その特性が、基礎体力の維持や筋肉の分解を防ぐことに役立つ可能性があります。
特に心臓・腎臓疾患やがんなどに伴う、カヘキシア(悪液質)への対策に期待。

いいことづくめのMCTオイル!逆にデメリットは?

ひとでは数々のデータにより安全性が確認されている「MCTオイル」も、犬においてはデータ量があまりに少なく、完全に「安全である」と言い切れないところ。

犬・猫専用のMCTサプリも販売されているので「安全だと思われる」のですが、わんちゃんの体の状態によっては使用がためらわれるなど、不確定要素が多くあります。

摂りすぎはダメ!急に増やすのもダメ

これは全ての食品や栄養素で共通です。
急な食事の変更はわんちゃんの内臓に負担をかける恐れがあります。
また「適量」が分かりにくく、過剰に摂取してしまうことも。

軽い下痢や軟便程度ならまだしも、『油』の摂りすぎは膵炎を患う可能性。
摂取する場合は1週間から10日かけて、状態を観察しながら徐々に増やしくいくといいでしょう。

肝臓への負担?それとも保護?

直接肝臓に運ばれ、ケトン体を作り出す。
素早くエネルギーに変わるというメリットが、肝臓の負担になるというデメリットを抱えています。

しかしその一方で、MCTは血糖値を下げることで肝臓を保護するという報告もあり。

これは、その時のワンちゃんの体の状態を見極め、適量を与える必要があること。
使いどころを間違うと、かえって病状を悪化させる恐れがあることを示しています。

ケトン体は体を酸性に傾ける

これによるデメリットで、まっさきに思い浮かぶのが「結石」
ストラバイト結石であれば改善につながるかもしれませんが・・・
シュウ酸カルシウム結石では悪化も考えられます。

ケトアシドーシスに注意

血液中のケトン体が200μmol/L以上の正常範囲内で増えた状態をケトーシスと呼びます。
糖質制限時などに現れる生理現象で、それほど問題はないと言われています。

一方で糖尿病などでは、糖質を摂っているのにインスリンが働かず、総ケトン体が7,000μmol/L以上となるケトアシドーシスという症状が現れます。
強い脱水、嘔吐、下痢、独特の口臭、さらに進行すると昏睡状態になり死に至ることも。

糖尿病だと知らず、ダイエット目的でMCTオイルを与えると急激に危険な状態に陥ることも考えられます。
血糖値に異常がみられる場合などは獣医師に相談の上、水分をしっかり摂り、体内のケトン体量を監視しながら与える必要があります。

脂肪を付けた方がいい場合もある

生後間もない子犬や、妊娠・授乳期は、しっかりと皮下脂肪を付けた方がいい時期。
また、チワワなど、ガリガリより、少しぽっちゃりしている方がいい犬種もあります。

とらのすけ
とらのすけ

とは言え「MCT(中鎖脂肪酸)」自体は、わんちゃんはじめ、他の動物の母乳にも多く含まれる成分。普段からみんな口にしてるんですよ。

今のところMCTをMCTオイルから摂取することは、「てんかん治療」など、はっきりと目的がある場合に限る方がいいでしょう。

MCTオイルは「自然由来」の油ではありますが、自然にそのまま存在するものではありません。
ヒッポのごはんでは、普段の食事でMCTが必要と考えられるときは、「ヤギミルク」など、自然の物から適量を摂れるようにしています。

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