ひじきとヒ素は切っても切れない縁!果たして犬に食べさせても大丈夫なのか?!

犬の栄養

※この記事は栄養成分自体の化学的な性質等を示すものであり、ごはんの効能を表すものではありません。

※はじめに
話の構成上、ひじきの危険性が先立ちますが

【結論】常識的な範囲であればひじきは犬に食べさせても大丈夫な食材。

ヤバイと噂の「ヒ素」はこんな物質

ヒ素は猛毒である
これは広く知られているところ

多数の死者・中毒患者を出した

・森永ヒ素ミルク中毒事件
・和歌山毒物カレー事件

その印象が強いだけではなく
過去にさかのぼると

・発展途上国で地下水のヒ素汚染
(特にバングラデシュ
・欧米諸国でも
ぶどう栽培の殺虫剤からワインへ混入
鉱山の鉱業従事者や周辺住民

などでは長期間の飲用や吸引による、慢性ヒ素中毒が大問題となっていました

かの「わが輩の辞書に不可能はない」
ナポレオンの死因がヒ素中毒だという説も

ヒ素の中毒症状

急性中毒では
吐き気・下痢・嘔吐・腹痛・重篤な場合は多臓器不全による死

慢性中毒では
肺や皮膚の発がん皮膚の角化・骨髄障害・末梢神経炎・黄疸・腎不全
など

そんな恐ろしいヒ素ですが
実は土や水中など、自然内に広く存在
なので

様々な食品が微量のヒ素を含む
・そしてヒ素は無味無臭

誰もが食品や飲料水を通じて、知らず知らずのうちに、ヒ素を摂取しているのです。

「え!じゃあ私もヒ素中毒になるの??」

ご安心ください。
現在まで、日本では食品からのヒ素摂取で健康被害の報告はありません。

ヒ素は「摂取してすぐアウト」ではなく

大量のヒ素を一度に摂取
・基準を超える量を長期間継続的摂取

で健康に被害が出るものなのです。

あらゆる食品に含まれるヒ素ですが・・・

そんな中、ヒ素の多さを懸念されるのが
「ひじき」
その量を見てみると

※すべて乾物の総ヒ素の平均値で 単位はmg/kg
農林水産省「食品に含まれるヒ素の実態調査」

・ひじき 93
・昆布 53
・わかめ 33
・海苔 25 

海藻は全般的にヒ素が多いですが・・・
中でもひじきは圧倒的
わんちゃんに食べさせてもいい
食材として紹介されることが多い「ひじき」
ですが、この点には注意が必要です。

ちなみに他にもヒ素が多い食品は

・玄米 0.17
・しいたけ 0.02
・里芋 0.01
・ほうれん草 0.01

海藻のヒ素量が圧倒的に多いでしょ。

実は同じヒ素でも種類で毒性が違う!

食品に含まれるヒ素には大きく分けて

・有機ヒ素
・無機ヒ素

2種類があります
※この2種の量の合計が総ヒ素量。

有機ヒ素は、毒性が非常に低い
又は確認されていないと言われています。
毒性が高いのは無機ヒ素。

日本の食文化に欠かせない、魚や海藻。
そこに含まれる多くは有機ヒ素なのです。

なので日本人は大丈夫!

ところがどっこい
先ほどと同じ海藻の無機ヒ素量を見ると

※すべて乾物の無機ヒ素の平均値 単位はmg/kg

・ひじき 67
・昆布 0.19
・わかめ 0.15
・海苔 0.16

ショック!
ひじきだけには無機ヒ素が非常に多い!
しかもぶっちぎりで。

英国食品基準庁が「ひじきを食べないよう」注意喚起したことがきっかけで、日本国内でも「ひじき」による健康被害が懸念され始めたのです。

この時

化学的なヒ素と違い、食品のヒ素に関しては毒性がほとんどない!遺憾である!

などと、根拠とデータをもって反論してくれてたら安心だったのですが

厚生労働省(超要約)
過去にも海藻に含まれるヒ素による、ヒ素中毒の健康被害が起きたとの報告はない!
海藻のヒ素の規制値がないのは、規制値を作る必要が無いから

日本食品安全委員会(超要約)
極端に多く食べない限り健康に悪影響が出たとの報告なし

およそ経験則に基づく見解。

他には

WHOが定める人の無機ヒ素の耐容量
15μg/kg体重/週

体重50kgの人であれば
15×50=750μg/週=107μg/日

水戻しヒジキの無機ヒ素濃度
=最大で22.7μg/g
※乾物⇒水戻しで無機ヒ素量は約50%になっています

107÷22.7
=毎日4.7g以上、週で約33g

の継続摂取で耐容量を超えることに。

国民栄養調査から推測される、日本人のヒジキの摂取量は約0.9g/日

「だから大丈夫なんです!」
とも説明されています。

しかしこの量
健康のために毎日ひじきを食べている方なら、簡単に摂取している量では?・・・

だがここで【朗報】

無機ヒ素は水溶性なので
水戻し~ゆでこぼし
約97%のヒ素を除去!

ゆでこぼしの調理法は

①乾燥ひじきを30分水に浸し戻す
②戻し水を捨てる
③お湯に入れ再沸騰後5分間茹でる
④茹でた湯を捨てて水洗い
※戻し汁・ゆで汁には無機ヒ素が溶け出しているので絶対使わない

この工程を経てもヨウ素、カルシウムなどの栄養素は7~8割残ります。
なので、ひじきを食べるならゆでこぼしは必須と言えるでしょう。

これを先ほどのWHOの基準に当てはめると

水戻しヒジキの無機ヒ素濃度
=最大で22.7μg/g
これが50%に減った状態だったので

ゆでこぼしたひじきであれば
97%減なので無機ヒ素濃度は
=最大1.36μg/g
という計算になります。

体重50kgの人
107÷1.36
=毎日78g以上、週で約546g

この量を継続的に摂取すると、耐容量を超えることになります。

通常の食生活ではあり得ない量ですね。

厚生労働省からは

通常の食生活を通じてヒ素が体内に入ることで、健康に悪影響が生じたことを明確に示す国内のデータは現在のところありません。 ひじきを食べることも含めて、バランスのよい食生活を送っていただければ問題ありません。

との結論に至っています。

ようやく!わんちゃんのごはんの出番になります

一般的なペットフードでは、もちろんヒ素の基準が定められてます。

以前は総ヒ素基準でしたが、技術の発達で、より有毒な無機ヒ素の量を検出できるようになりました。

なので現在は

フード1gあたり
無機ヒ素0.002mg/g

という基準。
これはEUでも採用されているもの。

この基準の安全性の根拠

無機ヒ素の毒性(亜急性毒性)試験で
有害な影響がない最大の投与量 
=0.8mg/体重1kg/日
であった。

さらに安全を考慮
10(安全係数)で割った数字を無機ヒ素摂取の許容量とする
=0.08mg/体重1kg/日

無機ヒ素0.002㎎/gのフード
※基準をクリアしたフードの最大値
5kgの犬で給与量120gと仮定
・無機ヒ素量(基準内フードのヒ素最大値) 
0.002×120g=0.24mg
・許容量
体重5kg×0.08=0.4mg

無機ヒ素量<許容量

なので安全にクリアできているという説明 
by環境省

一つ問題があるとすれば、これが亜急性毒性試験であること。
=24時間~28日間までの評価なのです。

それ以降の安全性は保障されない?

他のデータを見てみますと

・アメリカ幼児用シリアルの基準
=0.0001mg/g
0.002mg/gの基準をクリアしたフードでも、最大値なら20倍のヒ素が含まれていることになります。


・ネズミで半数が死亡する量
=15mg/体重1kg/日
体重5kgの犬で
=75mg/体重5kg/日
>0.24mg(基準内フードのヒ素最大値)
さすがにここは余裕でクリア

しかし人のデータではありますが

・肺がん発生率0.5%増の懸念
=0.003mg/体重1kg/日
=0.015mg/体重5kg/日

<0.24mg(基準内フードのヒ素最大値)
余裕でアウト

・皮膚病変の無有害作用量
※悪影響が認められない最大の濃度や量
=0.0008mg/体重1kg/日
=0.004mg/体重5kg/日
<<<<0.24mg

問題外

基準をクリアしたフードでも、肺がん・皮膚病変リスクの可能性があるということ。

わんちゃんの体内での解毒作用は人よりはるかに弱いといわれています。

幼児よりはるかに体の小さなわんちゃんの多い中、ペットフードに関する基準が甘く見えてしまうのは僕だけでしょうか?

ひじきのヒ素はわんちゃんに影響はある?

ネズミの実験で

38週=約8か月
ひじきを食べ続けても、ヒ素の影響はなかったという報告があります。

この時のヒ素量を計算すると
1.05mg/kg/日×38週
になるそうです。

ゆでこぼしのひじきのヒ素量
=最大1.36μg/g
=0.00136mg/g

体重1kgにつき
1.05÷0.00136=772g
まで食べても大丈夫という計算。

こんな量を食べられるわけありません!

また体重3kgのわんちゃんで
1日当たりの給与量

約7gまでなら肺がんリスクなし
約2gまでなら皮膚病変なし

という計算も立ちます。

とらのすけ
とらのすけ

ゆでこぼしたひじきなら、よほどのことがない限り、安心して食べられるんだね!

食品におけるリスクゼロは不可能?!

ここまで主にひじきとヒ素の危険性について考えてきました。

しかし突き詰めれば
どんな食品にも発がん性の一つや、皮膚に影響のある成分は出てくるもの。

それをゼロにするのは不可能
今回たまたま「ひじき」が目の敵にされているだけということが言えます。
乾燥ひじきの驚異的な無機ヒ素の量を見れば仕方ないかもしれませんが・・・

バランスのいい食事で、ひじきのいいところも取り入れる

経験則に基づき
いかに安全に調理するかを研究

という厚生労働省の判断が結局は一番正しいのかもしれません。

ただし犬ではまだ注意が必要です。

人ではヒ素は、体内に吸収されますが、尿から排出もされます。

これに関し犬で詳細なデータはない。
+犬の解毒作用の弱さも懸念材料。

たまに手作りごはんで食べる程度なら、ほぼほぼ問題はなし。

でもたとえ少量でも、毎日の継続摂取は危険がないとは言い切れないのです。

毎日フードのトッピングにひじき
ひじき入りのフードがメイン
(実際販売されているかは知りません)

といった状況はできる限り避けたほうがよい、というより他ありません。

とらのすけ
とらのすけ

リスクゼロにすることは不可能ですが、他の食材で替えが効くなら、無難な道を選ぶ方がいいかもしれませんね。

もっと安心できるかも!数値に関するあれこれ

今回、検証のために用いた数値の中で
最も重要なのが

水戻しヒジキの無機ヒ素濃度
=最大で22.7μg/g

これはFSA=英国食品基準庁の調査数値

それに対し農林水産省の調査では

水戻し後
最大で17μg/g
平均で3.6μg/g

という数値が発表されています。

また、FSAの数値に異を唱えた、日本ひじき協議会の最新の検査法では

水戻し後、乾燥重量あたり
30.19μg/g

ひじきは水戻しで乾燥の約8.5倍の重さに

なので上記を水戻しすると
30.19μg/8.5g
30.19÷8.5=3.55μg/1g

ということになります。

・FSAの約7分の1
・農林水産省の平均値とほぼ同じ

また日本ひじき協議会では
「FSAの検査はつじつまが合わない」
と明言してくれています。
個人的にも、やはり国内数値を信じたい気持ちが強い!

他の数値で注目は

WHOが定める人の無機ヒ素の耐容量
=15μg/kg体重/週

日本ひじき協議会によると

この数値は、ほぼ100%体内に吸収されることを前提にした基準。

本来なら、飲料水に混入したヒ素にだけ使われるべきもの。

食品としてヒ素を摂取した場合の、消化・吸収・排泄率など全て無視している。

これ以外に耐容量の基準は存在しません。
食品であるひじきにとって、不利な条件を押し付けられた形になっています。

最後にもう一つ

無機ヒ素は水溶性なので
水戻し~ゆでこぼし

約97%のヒ素を除去!

この「97%」は、公式に発表されている中で一番高い数値を引用したものです。

8割以上・8~9割・約90%など
色んな数値が発表されています。

ひじきの性質・水戻しの戻し具合・お湯の温度・ゆでる時間・・・etc
おそらく様々な条件下での実験
なので数値にばらつきがあるのでしょう。

一つ言えるのは

「ゆでこぼしたひじきは、よほど無茶な食べ方をしない限り安全である」

ということ。

とらのすけ
とらのすけ

見れば見るほど、ひじきは安全な食品だと思える!ただ・・・
ペットフードのヒ素の基準にだけは納得いかないな~

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