近年、愛犬の
健康志向の高まり
とともに
グレインフリー
=穀物不使用
のドッグフードが人気を集めています。
しかし、その一方で
・グレインフリーフードと
・犬の拡張型心筋症(DCM)
との関連性が指摘され、飼い主の間で混乱や不安が広がりました。
この記事では
・グレインフリーフードの基本
から
・DCMとの関連性についての最新情報
そして
・愛犬のために何を知っておくべきか
について詳しく説明していきます。
1.グレインフリードッグフードとは?
まず、基本をおさらいしましょう。
グレインフリーの定義
文字通り
・トウモロコシ
・小麦
・米
・大麦
・オーツ麦など
種子を形成するイネ科植物を
一切使用せずに
作られたドッグフードのことです。
・広義の定義では
マメ科やその他の科の種子を含みます。
・ここで言う穀物は狭義で
イネ科植物の種子を指しています。
遺伝子組み換え作物への不信感から、
▶大豆を含まないフード設計
となる場合も多く見られます。
●グルテンフリーとの違い
同じ「グ」から始まる上に、よく似た言葉でややこしいですが
・グレインフリー=「穀物不使用」
であって
・グルテンフリーは
・小麦
・大麦
・ライ麦
などに含まれるタンパク質の一種である
「グルテン」
を含まないことを指します。
グルテンフリーのフードの中には
・米
・トウモロコシなど
グルテンを含まない穀物
を使用しているものもあります。
この2つは混同されやすいですが、
厳密には異なる概念です。
まとめると
・グレインフリーであれば
=必然的にグルテンフリー
となりますが
・グルテンフリー
=グレインフリー
であるとは限りません。
グレインフリーの目的・メリット
●穀物アレルギーへの対応
特定の穀物
に対してアレルギーを持つ犬にとって
▶症状の改善が期待できます。
●消化への配慮
犬は元来肉食に近い雑食動物であり
▶穀物の消化が得意ではない
という考え方から、
消化器への負担を軽減する
目的で選ばれることがあります。
●高タンパク・低炭水化物
穀物の代わりに
▶肉類の割合を増やし
▶より犬の祖先の食事に近い栄養バランス
を目指した製品もあります。
※すべてがそういうわけではない
グレインフリーの注意点
●代替炭水化物の質
穀物の代わりに
・豆類
・エンドウ豆
・レンズ豆
・ヒヨコ豆など
・イモ類
・ジャガイモ
・サツマイモなど
が炭水化物源として多く使用されます
これらの原材料の
・特性
・配合バランス
が重要になります。
●グレインフリー=高品質ではない
グレインフリーであっても
・使用されている肉類の質が低い
・不必要な添加物が使われている
などの可能性はあります。
グレインフリーはあくまで
穀物不使用
を指す言葉であって、それが
高品質かどうか?
を示す言葉ではありません。
●コスト
一般的に、グレインフリーフードは穀物を使用したフードよりも高価になる傾向があります。
その他グレインフリーについて
●犬の祖先の食性
しばしば

犬の祖先のオオカミは穀物を食べていなかったからグレインフリーが良いに決まってる!
という主張があります。
確かに
・オオカミは肉食中心
ですが
・犬は
▶人間との長い共生の歴史の中で
▶デンプンを消化する能力を進化
させてきました。
そのため
適量の穀物
は多くの犬にとって問題なく消化できます。
●グレインフリーの流行
グレインフリーフードの流行には
・人間のグルテンフリー志向
・「より自然に近い食事」
という
マーケティング戦略
の影響も大きいと考えられます。
●重要なのは
「何が入っていないか」
より
「何が入っているか」
グレインフリーであること自体より
そのフードが愛犬に
・必要な栄養素をバランス良く
・質の高い原材料から供給
できているかどうかが重要です。
2.グレインフリーフードでよく使われる代替原材料
グレインフリーフードでは、穀物の代わりに以下のような原材料が
・炭水化物源
・タンパク質源
の一部としてよく使われます。
●豆類
◇種類
・エンドウ豆
・レンズ豆
・ヒヨコ豆
・大豆 など
◇特徴
・タンパク質
・食物繊維
が豊富です。
特にエンドウ豆は
・プロテイン(タンパク質)源
・デンプン源
として多用されます。
◇懸念点
一部の豆類に含まれる
・レクチン
・フィチン酸
などの成分は、
・栄養素の吸収を阻害
・消化器系の不調を引き起こす
などの可能性が指摘されています
※ただし、適切な加熱処理でこれらの影響は軽減
加えて
後述するDCMとの関連で特に
・エンドウ豆
・レンズ豆
などの豆類が主成分となっているフードが注目されました。
●イモ類
◇種類
・ジャガイモ
・サツマイモなど
◇特徴
主要な
炭水化物源
として使用されます。
比較的消化が良く
▶エネルギー源となります。
サツマイモ
・食物繊維
・ビタミン
も豊富です。
◇懸念点
ジャガイモは
GI値が比較的高いものがあり
GL値も高めなので
血糖値の急上昇
を招く可能性があります。
また DCMとの関連で
・ジャガイモ
・サツマイモ
が主成分となっているフードも一部報告されていました。
3.グレインフリーフードと拡張型心筋症(DCM)の関連性:最新情報と考察

ここが一番興味あるポイントだね!
3.1.FDA(アメリカ食品医薬品局)の調査と初期の指摘
【2018年】
FDAは、特定のドッグフード
=特にグレインフリー
・豆類
・イモ類
を主原料とするもの
を食べている犬において
DCMの発症報告が増加している
ことについて調査を開始しました。
そもそもDCMは特定の犬種
・ドーベルマン
・グレートデン
などに
遺伝的に好発する
ことが知られていました。
しかし、それ以外の犬種での報告が増えたことが注目されました。
FDAの報告
調査の過程で
DCMと報告された犬が食べていたフードの多くが
「グレインフリー」
であり、主成分として
・エンドウ豆
・レンズ豆
・その他の豆類
あるいは
・ジャガイモ
・サツマイモ
が多く含まれていることを指摘。
この時点では
・これらのフードと
・DCM
との間に直接的な因果関係があるとは断定していませんでした。
しかし
関連性を調査中
であると発表し
・飼い主
・獣医師
に注意を促しました。
疑われた要因
●タウリン不足
タウリンは
心筋の正常な機能
に不可欠なアミノ酸です。
猫では必須アミノ酸ですが
犬は体内で合成できる
ため必須ではありません。
当初、これらのフードで
・タウリンの吸収を阻害する
・タウリン合成に必要な栄養素不足
などの可能性が考えられました。
しかしDCMを発症した犬の多くで
血中タウリン濃度が正常値
であったことも報告されています。
●豆類の成分
豆類に多く含まれる特定の成分
・食物繊維の種類
・フィチン酸
・その他の抗栄養因子
などが
・タウリン
・他の心臓の健康に必要な栄養素
の
・吸収
・代謝
に影響を与えるのではないかという仮説も立てられました。
●原材料の品質やバランス
特定の原材料そのものというより
・フード全体の栄養バランス
・特定の原材料への極端な偏り
が問題ではないかという意見もありました。
●加工方法の問題
加熱不足により
豆類に含まれる
トリプシンインヒビターのような
タンパク質消化を阻害する物質
の残存する可能性を新たに報告。
また
発酵性の高いオリゴ糖に偏ることで
・過剰発酵
・タンパク質消化率の低下
につながる可能性もあります。
3.2.グレインフリーフードとDCMは「無関係」?
FDAの発表以降
・様々な研究
・議論
が行われてきました。
その中で
・グレインフリーフードとDCMは無関係
あるいは
・関連性は限定的
とする報告や意見も見られるようになりました。
・関連性を否定する意見
もあれば
・限定的な関連性を指摘する
研究もあります。
背景には
・グレインフリーフードを市場に展開する
=メーカーの意図
・純粋に犬の健康を追求する
=研究者の探求心
など、多様な思惑が絡み合っているのかもしれません。
●研究の複雑さ
DCMの発症には
・遺伝的素因
・食事
・感染症
・その他の未知の要因など
多くの要素が複雑に関与
している可能性があり
食事だけが原因である
と特定するのは非常に困難です。
●タウリン濃度との不一致
前述の通り
DCMを発症した犬の多くで
▶血中タウリン濃度が正常
であったことから
単純なタウリン不足
だけでは説明がつかないケースが多いことが分かってきました。
●他の栄養素の関与
L-カルニチンなど
他の心臓の健康に関わる栄養素の
・欠乏
・代謝異常
もDCMの原因となり得ます。
●BEG食というくくりへの疑問
FDAが当初注目したフードは
・Boutique
=小規模メーカーの製品
・Exotic-ingredient
=珍奇な原材料
・カンガルー
・ダチョウ
・アワなど
・Grain-free
=穀物不使用
の頭文字をとってBEG食と呼ばれることもありました。
しかし
・このくくりが広すぎること
・必ずしもこれらの特徴を持つフード全てが問題であるわけではない
という批判もあります。
●最新のFDAの見解
(2022年12月更新時点など)
FDAは引き続き
DCMの報告
を監視しています。
それによると2020年以降
DCMの報告件数は減少傾向にある
としています。
また
・特定の食事と
・DCM
との関連性について、現時点では

科学的に明確な因果関係は確立されていない
としています。
ただし
調査は継続中
であり
▶特定の食事療法が
▶DCMのリスクを高める可能性
については依然として考慮されています。
●獣医学界のコンセンサス
※コンセンサス=意見の一致
多くの獣医心臓専門医は
・グレインフリーフード
・DCM
の関連性について

まだ解明されていない部分が多い
と考えています。
一部の犬では
▶食事の変更によって
▶DCMの症状が改善した
ケースも報告されています。
しかし全てのケースでそうなるわけではありません。
現時点では、グレインフリーフードは
「全ての犬にとって危険」
とも
「全く無関係」
とも断言できない。
というのが一般的な見方です。
つまり
無関係という報告
は無関係が証明されたわけではなく
これまでの研究で
・直接的な因果関係が証明されていない
・DCMの原因が多因子である可能性が高い
ことなどを指していると考えられます。
ということで
・FDA
・多くの専門家
は、特定の食事内容が
▶一部の犬においてDCMのリスク因子の一つとなり得る可能性を
完全に否定
しているわけではないのです
4.グレインフリーフードを選ぶ際の注意点
以上の情報を踏まえ、グレインフリーフードを選ぶ際には以下の点に注意しましょう。
●グレインフリーの言葉だけで選ばない
グレインフリーが必ずしも愛犬にとって最良の選択とは限りません。
●原材料表示をしっかり確認する
◇主なたんぱく源
良質な動物性たんぱく質が十分に配合されているか。
◇代替炭水化物源
・豆類
・イモ類
が過度に多く配合されていないか。
特に原材料リストの最初の方に
・豆類
(エンドウ豆プロテインなども含む)
が複数記載されている場合は注意が必要。
◇全体のバランス
特定の原材料に偏りすぎていないか。
●メーカーの信頼性と情報開示
◇長年の研究実績があるか。
◇栄養学専門の
・獣医師
・専門家
が開発に関わっているか。
◇DCM問題に対する
・見解
・取り組み
について情報を開示しているか。
●愛犬の個体差を考慮する
・犬種
・年齢
・活動量
・健康状態
によって必要な栄養は異なります。
●獣医師と相談する
特に
・DCMのリスクが高いとされる犬種
・ゴールデンレトリバー
・コッカースパニエルなど
・心臓に不安のある犬
の場合は、食事について必ず獣医師に相談しましょう。
・タウリン値の測定
・心臓の検査
を勧められることもあります。
●定期的な健康チェック
フードを変更した後は
・愛犬の体調変化
・食欲
・元気
・便の状態
・毛艶など
を注意深く観察しましょう。
5.まとめ:飼い主としてどう向き合うか
・グレインフリーフード
・DCM
の関連性については、まだ
▶科学的に解明されていない部分が多く
▶情報も錯綜しがちです。
しかし、現時点で言えることは
「グレインフリー=安全・高品質」
でも
「グレインフリー=危険」
でもないということです。
大切なのは
・流行やイメージに流されず
一つ一つの製品の
・原材料
・栄養バランス
を吟味し
・愛犬の個体差を考慮すること。
そして信頼できる獣医師と連携することです。
この記事が、愛犬のためのフード選びの一助となれば幸いです。
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