
遺伝子疾患ってよく聞くけど、どんなものがあるの?

ミックス犬は丈夫って聞いたけど、本当に大丈夫?
愛犬との健やかな生活を送る上で、避けて通れないテーマの一つが
「遺伝子疾患」
愛らしい表情の
・裏に潜むリスクを理解し
・適切に対処する
そのことが
愛犬の健康寿命
を延ばすことにつながります。
この記事では犬の遺伝子疾患について
・その種類から症状
・かかりやすい犬種
そして
・ブリーダーが取るべき対策
さらに
・健康な子犬を見分けるためのポイント
まで、分かりやすく解説します。
犬の遺伝子疾患とは?その種類とメカニズム
遺伝子疾患とは?
親から子へと受け継がれる
遺伝子の異常
によって引き起こされる病気のことです。
現在、犬の遺伝子疾患は700以上が特定されています。
そのうち200以上の疾患で原因となる遺伝子変異が特定されています。
一口に遺伝子疾患といっても、その発症メカニズムは様々です。
●単一遺伝子疾患
一つの遺伝子変異によって引き起こされる病気。
・進行性網膜萎縮症(PRA)
・変性性脊髄症(DM)
などがこれに当たります。
●多因子疾患
複数の遺伝子に加え
・生活環境
・食生活
などの要因が複雑に絡み合って発症する病気。
・股関節形成不全
・膝蓋骨脱臼
などが代表的です。
●染色体異常
染色体の
・数
・構造
に異常があることで発症する病気。
染色体異常は
様々な病気の原因となります。
遺伝子疾患はどのように遺伝するの?
遺伝子疾患の多くは
遺伝子の「劣性遺伝」
という形で親から子に伝わります。
これを理解するために
「クリア」
「キャリア」
「アフェクテッド」
という3つのタイプを知っておきましょう。
※わかりやすくするため、病気の原因となる遺伝子を「悪い遺伝子」と表現しています。
●クリア
=悪い遺伝子を全く持っていない
この犬は
・遺伝子疾患を発症せず
・子孫にも悪い遺伝子を伝えません。
安心して繁殖に使える、健康な状態。
●キャリア
=悪い遺伝子を一つだけ持っている
この犬自身は
病気を発症しません。
しかし、自分の子どもには
・50%の確率で
・その悪い遺伝子を伝える可能性
があります。
言うならば遺伝子疾患の
隠れた運び屋
のような存在です。
●アフェクテッド
=悪い遺伝子を二つ(ペアで)持っている
この犬は
遺伝子疾患を発症します。
そして、その子どもには
必ず悪い遺伝子を伝えます。
病気に「罹患している」状態。
これらのタイプの組み合わせが
子犬への遺伝子疾患の伝わり方を決めます

◇クリア × クリアの交配
生まれてくる子犬はすべてクリア。
最も理想的な組み合わせです。
◇クリア × キャリアの交配
生まれてくる子犬は
・「クリア」が50%
・「キャリア」が50%
になります。
子犬自身は病気を発症しません。
しかし!
キャリアの子は
・次世代に悪い遺伝子を伝える
可能性があります。
◇キャリア × キャリアの交配
生まれてくる子犬は
・「クリア」が25%
・「キャリア」が50%
・「アフェクテッド(発症する子)」が25%
になります。
この組み合わせは
▶病気の子犬が生まれるリスク
▶優良なブリーダーは絶対に避けます。
◇キャリア × アフェクテッド の交配
生まれてくる子犬は
・「キャリア」が50%
・「アフェクテッド」が50%
になります。
もちろん避けられます。
◇アフェクテッド × アフェクテッドの交配
生まれてくる子犬は
・すべて「アフェクテッド」
になります。
もちろん避けられます。
このように
親犬の遺伝子タイプを知ること
は遺伝子疾患の子犬が生まれるリスクを管理するために非常に重要なのです。
主な遺伝子疾患の種類と症状、かかりやすい犬種
ここでは
・よく知られている遺伝子疾患
・その特徴
・発症しやすいとされる犬種
をご紹介します。
1.進行性網膜萎縮症(PRA)
●症状
網膜が徐々に変性・萎縮し
▶視力が低下。
初期は夜盲(暗いところで見えにくい)が特徴
最終的には失明に至ることもあります。
●なりやすい犬種
・トイプードル
・ミニチュアダックスフンド
・チワワ
・ヨークシャーテリア
・ゴールデンレトリーバー
・ラブラドールレトリーバーなど
2.変性性脊髄症(DM)
●症状
脊髄の神経が変性し
▶徐々に麻痺が進行します。
最初は
▶後肢のふらつきから始まり
▶やがて麻痺が全身に広がり
▶最終的に呼吸困難に至る
こともあります。
●なりやすい犬種
・ウェルシュ・コーギー・ペンブローク
・ジャーマンシェパード
・ボクサー
・フレンチブルドッグ
・プードルなど
3.股関節形成不全(CHD)
●症状
股関節の骨の形成異常により
・痛みや跛行(びっこ)
・運動能力の低下
が見られます。
進行すると関節炎に発展することも。
●なりやすい犬種
・ゴールデンレトリーバー
・ラブラドールレトリーバー
・ジャーマンシェパード
・バーニーズマウンテンドッグ
・シベリアンハスキーなど
大型犬に多く見られますが、小型犬でも発症することがあります。
4.膝蓋骨脱臼(PL)
●症状
膝のお皿=膝蓋骨が正常な位置からずれてしまう病気。
軽度であれば無症状です
進行すると
・痛みや跛行
・跳ねるような歩き方
などが特徴的です。
●なりやすい犬種
・トイプードル
・チワワ
・ポメラニアン
・ヨークシャーテリア
・マルチーズなど
小型犬に多く見られます。
5.GM1ガングリオシドーシス
●症状
神経細胞内に異常な物質が蓄積
▶神経症状が現れる
・運動失調
・歩行困難
・筋力低下
・震えなど。
重症化すると短命に終わることが多いです。
●なりやすい犬種
柴犬、豆柴など
6.フォンウィルブランド病(VWD)
●症状
血液凝固に必要なタンパク質が不足
▶出血しやすくなる。
・軽度の打撲でも内出血を起こす
・手術時に出血が止まりにくくなる
など
●なりやすい犬種
・ドーベルマン
・シェットランドシープドッグ
・ゴールデンレトリーバーなど
ブリーダーとしての遺伝子疾患対策:健全な繁殖への取り組み
優良なブリーダーは
遺伝子疾患リスクを最小限に抑える
ために、様々な対策を講じています。
●遺伝子検査の実施
最も基本的な対策は
繁殖に使用する親犬に対して
▶その犬種で発症しやすい遺伝子疾患の検査を実施することです。
検査で悪い遺伝子が発見されれば
・キャリア
・アフェクテッド
の犬同士の交配を避けることで、子犬への遺伝を未然に防ぐことができます。
●健康診断とスクリーニング
・股関節形成不全
・膝蓋骨脱臼 など
多因子疾患のリスク
を評価するために
・レントゲン検査
・整形外科的検査など
定期的な
・健康診断
・スクリーニング
を行います。
これにより
すでに身体的な問題を抱える犬
の繁殖を避けます。
無症状の集団に対して、病気を見つけ出す目的で行われる検査
●血統の管理と情報公開
親犬だけでなく
その血統(祖父母や曾祖父母など)まで遡って
・健康状態
・遺伝子疾患の有無
を把握し、繁殖計画に役立てます。
顧客に対して
・親犬の健康情報
・遺伝子検査の結果
を透明性高く公開するブリーダーは信頼できます。
●出産頭数の管理と母犬の健康
母犬の健康を最優先に考え
▶無理な繁殖をさせない
ことも重要です。
・十分な休息期間を与える
・健康状態が良い時にのみ繁殖
などで母犬と子犬双方の健康を守ります。
健康な子犬を見分ける!優良ブリーダーと信頼できる犬舎の選び方
遺伝子疾患のリスクを減らすためには
何よりも
「どこから子犬を迎えるか」
が非常に重要です。
ここでは
・優良なブリーダーの見分け方
を説明していきます。
1.親犬の情報を積極的に公開している
●親犬の姿を見せてくれるか
・実際に親犬に会わせてもらえる
・写真や動画で親犬を見せてくれる
そんなブリーダーは、健康状態に自信を持っていると言えるでしょう。
●親犬の遺伝子検査の結果の提示
上記で述べた
遺伝子検査の結果を提示してくれるか?
確認しましょう。
口頭だけでなく、書面で提示してくれるとより安心です。
●親犬の性格や健康状態の説明
親犬の性格が子犬に遺伝することも。
そのため
・その犬種特有の性格
・親犬の普段の様子
について詳しく説明してくれるブリーダーを選びましょう。
2.飼育環境が清潔で衛生的である
●犬舎や飼育スペースの清掃
・糞尿の臭いがなく
・清潔に保たれているか?
を確認しましょう。
衛生的な環境で育った子犬は、免疫力が高く健康に育ちやすいです。
●子犬たちが過ごすスペース
・狭いケージに押し込められてない?
・運動できるスペースがある?
など、子犬のためのスペースが十分確保されているかも確認ポイントです。
3.動物取扱業の登録番号が明示されている
ブリーダーとして
子犬を販売するには、都道府県への
「動物取扱業」
の登録が必要です。
登録番号がきちんと表示されているか?
確認しましょう。
4.契約前に十分な説明と質問の機会をくれる
●子犬の特性や飼い方について
・その犬種の特性
・子犬の個性
・必要なケアなど
について詳しく説明のあるブリーダーは
・知識
・責任感
を持っています。
●質問に誠実に答えてくれるか
・気になること
・不安な点
に対して
・誠意をもって
・丁寧に
答えてくれるかを見極めましょう。
5.子犬の健康チェックをしっかり行っている
●ワクチン接種や健康診断の状況
・子犬の健康診断の結果や
・初回ワクチン接種の有無
などをきちんと説明してくれるか確認しましょう。
●生後56日(8週齢)以降
子犬は
生後56日
を過ぎてからでなければ
・販売
・引き渡しができません。
(動物愛護管理法による)
これは
・社会化
・母犬・兄弟犬からの学び
を十分に得るためにも重要な期間です。
遺伝子疾患を「完全に避ける」ことは難しい?
どんなに優れたブリーダーでも
遺伝子疾患のリスクを「ゼロ」
にすることはできません。
犬の遺伝子は
・非常に複雑であり
・まだ解明されていない遺伝子疾患も多数存在します。
大切なのは
・リスクを理解し
・リスクを最小限に抑える努力を怠らない
そういうブリーダーを選ぶことです。
【重要】「DNAクリア」という言葉の誤解
一部のブリーダーは

うちの子はDNAクリアだから大丈夫
と説明することがあります。
しかしこの言葉は
「全ての遺伝子疾患に対してクリア」
という意味ではありません。
多くの場合
「特定の遺伝子疾患に対してクリア」
という意味です。
犬には非常に多くの遺伝子疾患が存在。
そのため
一つの検査だけで
▶全ての疾患のリスクがない
と判断することはできません。
優良なブリーダーは
▶この点を明確に説明し
▶複数の遺伝子検査の結果を開示します。
まとめ:遺伝子疾患の知識は愛犬の未来を守る力
犬の遺伝子疾患は、飼い主さんにとって不安なテーマかもしれません。
しかし
・正しい知識を持ち
・信頼できるブリーダーから迎える
ことで、そのリスクを大きく減らすことができます。
遺伝子疾患に関する知識は
愛犬の
・健康
・幸せな未来
を守るための大切な一歩です。
もし今、子犬を迎えようと考えているなら、ぜひこの記事で得た知識を活かしてください。
そして
・賢明で
・愛情あふれる選択
をしてください。
もし愛犬に遺伝子疾患の症状が見られた場合は
・早期に獣医さんに相談し
・適切な治療とケア
を行ってあげましょう。
愛犬が健康で、あなたとの素晴らしい毎日を過ごせるよう、心から願っています。
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