※画像のわんちゃんと心臓病とは何の関係もありません
犬の心臓病とは?
◆心臓病とは?
心臓は、全身に血液を送る「ポンプ」のような役割。
心臓病(心不全)は、ポンプにより送りだされる血流が不適切な状態
⇒身体が求めている栄養素を十分に供給できない病気
犬の死亡原因の中で、トップ3に入る病気
10歳以上の犬の約1/3が発症しているとも言われる「僧帽弁閉鎖不全症」
様々な「心不全」「心臓肥大」「心雑音」といった症状
「肺水腫」「腎不全」などを併発するケースも多い
犬の心臓病に見られる症状
◇心臓病の症状・3分類
1)心拍出量の低下
心臓のポンプ能力が不十分(不適切)
〇虚弱
十分な運動ができない、したがらない
〇失神
2)肺水腫(肺うっ血)
肺うっ血=肺血管の血液量が多くなっている状態
進行⇒血液が血管の外にしみだし、肺にたまる⇒「肺水腫」
心臓病が重症化したケースで「目に見える症状」
〇呼吸困難
起坐呼吸(横になると呼吸が難しく、お座りして胸を大きく動かして呼吸すること)
〇咳が止まらない
〇異常な呼吸音(気管支トラブルなどの乾性ラッセル音、肺トラブルの湿性ラッセル音を伴う)
3)全身の体液バランスの崩れ
心臓と腎臓の働き=体液バランスを保つ。
心臓病や腎臓病⇒体液バランスが崩れ、健康を害す。
〇症状
肝腫大・腹水・胸水
◇4つのステージ
心臓病の対策検討に、どのステージに該当するのか、把握することが一つのポイント
〇ステージA
心不全の発症リスクが高いものの、心臓に器質的な変化はない。
軽い心雑音がある、などの状態。
〇ステージB
心臓に器質的異常はあるが、過去にも現在にも心不全兆候はない。
例)僧帽弁逆流の無症候性雑音が見られる、など。
〇ステージC
犬の心臓に器質的な異常が見られ、かつ、現在または過去に心不全兆候がある状態。
〇ステージD
標準的な治療では効果不十分、といえる心不全兆候が見られる。
例)標準用量のフロセミド・ACE阻害剤・ピモベンダンなどの薬では、不十分な状態
◇心臓病の犬に起こっていること
〇全身の高血圧
局所的にとどまらず、全身に高血圧が見られるケースも
全身の高血圧は、心臓に負担をかけるだけではなく、腎臓病が疑われる所見
〇合併症(腎臓病)の存在
頻発する合併症は、腎臓病。
「慢性腎疾患がベースにあるケース」
「心臓病が慢性腎疾患を悪化させるケース」
⇒両方があり、両疾患が相乗的に悪化させあう関係
⇒心臓病を抱える全てのワンちゃんに腎臓病の検査が必須
・「BUN(尿素窒素)」「クレアチニン」など血液検査数値
・「電解質」「カルシウム」「リン」といった指標をチェック
・腎臓の状態をモニタリング
〇心臓活動に関わる栄養成分の変動
「脈動や心筋収縮に関わる成分」や「犬の心臓に特に多く含まれる成分」が重要
・「マグネシウム」は、犬の不整脈の進行・悪化に関与する
・重度の「電解質」異常による心筋収縮性の低下は、犬の心筋虚弱を起こす
・「タウリン」の減少は、心筋症と関係する
・心臓組織において、「L-カルニチン」は含有量が特に多い
といった心臓病の栄養所見
〇神経ホルモン活性化因子の異常
心臓のポンプ機能⇒神経ホルモンの作用により正常に保たれる。
逆に言えば、進行した心臓病では、神経ホルモンの異常が見られる。
「レニン」「アンギオテンシン」「アルドステロン」「AVP(抗利尿ホルモン)」
「ノルエピネフリン」「脳性・心房性ナトリウム利尿ペプチド」など
犬の心臓病の主な原因
◆主な原因
◇犬種・性別など、先天的要因
犬の心臓病において最も重要な危険ファクター
〇慢性の弁膜性心疾患・・・小型犬での発症リスクが高い。
〇拡張型心筋症・・・大型犬のオス
〇心膜炎・・・大型のオスの中でも、ゴールデン/ラブラドールレトリバー・jシェパード・秋田犬など
◇肥満
「心拍出量のアップ」「血漿および細胞外液量の増加」「神経ホルモン活性化」
「尿中ナトリウムおよび水の排出量減少」「心拍数の増加」「心室機能の異常」
「運動不足の傾向」「様々な血圧反応」などの要素が心臓トラブルにつながる
◇他の病気
〇腎臓病との関わりは深い⇒お互いの症状進行に伴い、併発リスクも高まる
腎疾患は、心臓病治療薬による影響も受けやすい⇒対策が難しい
〇内分泌疾患:例:クッシング症候群は、肺血栓塞栓症を発症させやすいなど
◇薬剤
心臓病対策の薬剤であっても、用法・用量を誤ると症状の悪化
例:「利尿剤」「心室収縮性を高める薬」「ACE阻害剤」
⇒、脱水・低血圧・腎不全・電解質異常・体内pH平衡トラブル・不整脈・食欲低下などにつながるリスク
◇寄生虫(フィラリア)
蚊によって媒介され、犬の右心室や肺動脈に寄生
⇒肺水腫を伴う心不全をはじめ、肺血栓塞栓症などの原因
犬の心臓病の治療の例
◆治療方法
◇薬
〇利尿剤
おしっこを出やすくする。。特に急性心不全で使用
ナトリウム制限をはじめとするミネラル調整を行った食事療法と併用
長期使用する場合、チアミン欠乏があるので食事やサプリメントで補給する。
〇ACE阻害薬
血管拡張とともに血圧の上昇をおさえ、心臓負担を和らげる、広範囲で使用
腎不全を併発している場合は注意が必要です⇒高カリウム血症を誘発するリスク
高カリウムの食事や、カリウムを保持するタイプの利尿剤を使用している場合は要注意
「エナラプリル」「ベナゼプリル」「リジノプリル」「フォルテコール」など
〇血管拡張薬
ACE阻害薬と併用されることも多い
例:即効性のある「ニトログリセリン」
より持続性のある「硝酸イソソルビド」「アムロジピン」など
〇強心配糖体
心臓のポンプ機能を強化する。
心臓から一度に送りだす血液量が増える⇒心拍数を減少
腎臓への血液量も増⇒利尿作用も⇒浮腫を和らげる効果
一方で心臓にはやや負担⇒急性の心筋梗塞などでは使用を控える。
腎臓疾患を併発している場合も、要注意。
食間に与えることがポイント。
例:「ピモベンダン」「ジゴキシン」など
〇β遮断薬
交感神経系を興奮させるホルモン「ノルアドレナリン」を抑える⇒心臓の活動を和らげる
結果、血圧をおさえる効果も
◇手術
僧帽弁閉鎖不全症を中心に、心臓病の外科技術が急速に発達。
高いレベルで行えるところは一部の専門的な動物病院
治療費も150万円前後⇒まだまだ治療の中心とはなってない。。
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