狂犬病
その名を聞くと
・遠い異国の話
あるいは
・過去の病気
だと感じるかもしれません。
しかし、このウイルス性疾患は
発症すればほぼ100%死に至る
という
医学的に最も致死率の高い病
の一つです。
狂犬病ウイルスは
感染した動物の唾液を介して
▶主に咬傷によって伝播し
▶脳や神経系を侵し
▶生命維持に不可欠な中枢を破壊
してしまいます。
犬だけでなく
・キツネ
・コウモリ
・アライグマ
などの野生動物も感染源となり
人間にも感染する
「人獣共通感染症」の代表例です。
日本は現在
「狂犬病清浄国」
という稀有な地位を保っています。
世界には約196の国があります。
しかし、その
90%以上の地域
で狂犬病が発生しており
年間約5万9千人もの人々
がこの病によって命を落としています。
そのほとんどが
・アジア
・アフリカ
の子どもたちです。
そんな中で、日本がこの
「狂犬病清浄国」
としての地位を維持できているのは
・英国
・オーストラリア
・ニュージーランド
・アイスランド
・フィジー諸島
・ハワイ
・グアム
・シンガポールなど
世界でもごく限られた国・地域
と肩を並べる
特異な状況
にあることを意味します。
この圧倒的な
・死亡者数
・世界的な分布
を見れば、狂犬病が今なお
人類にとって深刻な脅威
であり、日本の状況がいかに
奇跡的
であるかお分かりいただけるでしょう。
では、なぜ私たちは
日本から消えたはずの狂犬病
について、今、深く知る必要があるのでしょうか？
それはこの清浄国という平和な現状が
・決して揺るぎないものではなく
私たち一人ひとりの意識と行動によって支えられている
・脆い基盤の上にある
からです。
そして
▶過去の悲劇を知ることで
▶未来の悲劇を防ぐための教訓を得る
ことができるからです。
現実の恐怖：実際の症例やパンデミックの記録
過去の国内での発生事例と終息への道のり
日本において
狂犬病が最後に流行したのは
1950年代
のことです。
戦後の混乱期で犬の
狂犬病予防接種率が低下
したことで大規模な流行が発生。
非常に多くの
・犬
・人
が犠牲となりました。
特に1950年代前半には
年間数千件の狂犬病の発生
が確認され、人間の死者も多数報告されました。
例えば1956年には、わずか1年間で
200人を超える人々
が狂犬病で死亡したという記録が残っています。
この悲劇を二度と繰り返さないため
日本は
狂犬病予防法
を制定し
・犬への年1回のワクチン接種
・飼い犬の登録
を義務付けました。
さらに
・野犬の駆除
・輸入動物に対する厳格な検疫措置など
徹底した対策が講じられました。
その結果、1957年以降
▶国内での犬の狂犬病発生は激減し
▶1958年には人間への感染が０に。
そして、1960年代には
国内発生がゼロ
となり、今日まで「狂犬病清浄国」の地位を維持しています。
これは
・国民一人ひとりの努力
・行政の断固たる措置
が一体となった、世界でも稀に見る公衆衛生上の成功例と言えます。
しかし、この平穏な記録は
「絶対」ではありません。
2006年
フィリピンから帰国した旅行者が
▶狂犬病を発症し
▶死亡する
という輸入感染事例が2件発生。
これは、日本の検疫体制をすり抜けたものではなく
海外で感染した方
が日本に帰国後に発症したケースです。
この事例は
国境を越えて病原体が侵入するリスク
が常に存在することを、私たちに強く示唆しました。
世界の状況：狂犬病が今も猛威を振るう地域
・アジア
・アフリカ
・中南米
などでは、狂犬病は依然として
深刻な公衆衛生上の問題です。
特に貧困地域を中心に、狂犬病対策が十分に普及していない地域では
・野犬
・野生動物
が主な感染源となり、多くの犠牲者を出しています。
例えば
インドでは狂犬病による死者が
年間約2万人に上る
と言われ、世界全体の狂犬病死者の
約3分の1
を占めます。
また、東南アジアの観光地でも
野犬との接触
による感染リスクは存在し、実際に
▶海外旅行中に犬に咬まれ
▶帰国後に発症するケース
も報告されています。
これは、狂犬病が
遠い世界の出来事ではなく
国際社会の一員である私たちにとっても
身近なリスク
であることを示しています。
愛犬が狂犬病に感染したら・・・どうなる？
狂犬病ウイルスに感染した犬は、その性格が大きく変わることがあります。
初期には
・行動の変化
・臆病になったり
・逆に攻撃的になったり
・発熱
・食欲不振
などが見られます。
やがて
狂躁型
と呼ばれる興奮状態となり
攻撃的になって周囲を咬みつく
「狂暴な犬」のイメージ
になることもあれば
麻痺型
と呼ばれる静かなタイプで
・飲み込みが困難になり
・よだれを垂らし続ける
こともあります。
最終的には全身麻痺が進行
数日以内に死に至ります。
もし愛犬が狂犬病に感染し発症した場合
残念ながら、その犬は
生きながらえることはできません。
狂犬病の治療法は確立されておらず
獣医療の現場では
その苦しみを長引かせないための
安楽死
という、飼い主にとって最も辛い選択を迫られることになります。
さらに狂犬病と診断されれば
その犬に接触した
・人間
・動物
は感染のリスクに晒され
・厳重な経過観察
人間であれば
・暴露後接種
という緊急措置が必要となります。
これは個人の悲劇に留まらず
・周囲の人々
・地域社会全体
に深刻な影響を及ぼす事態となるのです。
予防の重要性：ワクチンが果たす役割の再確認
日本が狂犬病清浄国であるのは、決して自然にそうなったわけではありません。
その背景には狂犬病予防法に基づく
・犬の登録
・年1回の狂犬病ワクチン接種
・犬の飼育者の遵守義務
という
三位一体
の徹底した対策があります。
特に
犬への狂犬病ワクチン接種
は感染源となる犬からの
▶ウイルスの伝播を防ぎ
▶人間への感染リスクを根本から断ち切る
上で最も効果的な手段です。
このワクチン接種は
・個々の犬を守る
だけでなく
・地域全体での「集団免疫」
を形成し
狂犬病の蔓延を抑えるという
公衆衛生上の重要な役割を担っています。
もし、ワクチン接種率が低下すれば
▶ひとたびウイルスが国内に侵入すると
▶瞬く間に感染が広がり
▶過去の悲劇が繰り返される
という可能性が現実のものとなります。
狂犬病ワクチン接種は
単なる愛犬のための医療行為
ではありません。
それは
・私たちが住む日本の安全を守り
・人間社会と動物社会の共存を守る
ための、私たち飼い主の
社会的責任
であり、未来への投資なのです。
飼い主へのメッセージ：今、私たちにできること
狂犬病は一度でも
発症すれば助からない病気
です。
この事実を忘れてはなりません。
日本が
狂犬病清浄国
であり続けるために、そして何よりも
・愛する家族の一員である愛犬
そして
・私たち自身
を守るために、飼い主として果たすべき役割は明確です。
●ワクチンの年1回接種義務を果たす
これは
法律で定められた義務
であり
・愛犬の命を守る
と同時に
・社会全体を守る
ための最低限の責任です。
特定理由で接種が困難な場合は
▶必ず獣医師に相談し
▶猶予証明書の発行を受けてください。
●海外渡航時や輸入動物に関する注意喚起
・海外へ犬を連れて行く
・海外から動物を輸入する
などの場合は
・狂犬病の検疫制度
・現地の状況
について事前に十分な情報収集を行い、厳格な手続きに従ってください。
安易な持ち込みは、日本全体の安全を脅かすことになります。
●不明な動物との接触に注意する
海外旅行中はもちろん
国内であっても
・野良動物
・見知らぬ動物
との安易な接触は避けるべきです。
咬まれた場合は、速やかに医療機関を受診し、獣医師にも相談してください。
●不安があればすぐに獣医師に相談
狂犬病に関して少しでも
・疑問
・不安
があれば、かかりつけの獣医師に遠慮なく相談してください。
専門家である獣医師は
・科学的根拠に基づいた正確な情報を提供
・適切なアドバイスをしてくれます。
狂犬病は過去の物語ではありません。
私たちが日々の予防を怠れば
いつ
どこから
その恐怖が再び忍び寄ってくるかは分かりません。
・愛犬との幸せな日々を守るため
そして
・日本の安全な環境を維持するため
私たち飼い主一人ひとりの
・理解
・行動
が「今」強く求められています。
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