犬の膵炎【深掘り解説】初期症状から治療法、薬の副作用、長生きのための食事療法・再発予防策、治療費まで

栄養対策

我が家の愛犬が
・突然ぐったり
・何度も嘔吐
そんな姿を見るのは、飼い主さんにとって非常につらいものです。
その原因の一つとして考えられるのが
膵炎
早期発見と適切な治療、そして何よりも再発させないための日々のケアが重要となる病気です。

犬の膵炎とはどんな病気か? – 自分の消化酵素で自分を溶かす!?

膵炎とは、その名の通り
膵臓(すいぞう)に炎症が起こる
病気です。

膵臓は、胃と十二指腸の近くにあり、大きく分けて2つの重要な役割を担います。

●膵炎の重要な2つの役割

①外分泌機能
食べ物の消化に必要な様々な消化酵素
・タンパク質分解酵素
・脂肪分解酵素
・炭水化物分解酵素など
合成
膵管を通じて十二指腸へ分泌します。

②内分泌機能
・インスリン
・グルカゴン
といった血糖値を調節するホルモンを血液中に分泌します。

通常、膵臓内で作られる消化酵素は
▶不活性な状態で蓄えられ
▶十二指腸に分泌されてから活性化
しかし、何らかの原因で膵臓内でこれらの消化酵素が異常に活性化してしまうことで
▶膵臓自体が消化酵素によって自己消化
強い炎症
 =膵炎を引き起こしてしまうのです。

膵炎には「急性」と「慢性」があります

膵炎の症状は、炎症の程度や急性か慢性かによって大きく異なります。
どんな症状が出るのか?
見逃したくないSOSサインを知っておきましょう

●急性膵炎

命に関わることもあり、迅速かつ適切な治療が必要です。
また、炎症が膵臓だけでなく
周囲の臓器
・肝臓
・胆嚢
・腸など
や全身に波及し、多臓器不全などの深刻な合併症を引き起こすこともあります。

◇急性膵炎の典型的な症状

━激しい腹痛
最も特徴的な症状の一つ。
・祈りのポーズ
 (前足を伸ばし、お尻を高く上げる姿勢)


・お腹を触られるのを極度に嫌がる
・震える
・落ち着きがない
・呼吸が速くなる
などが見られます。

「祈りのポーズ」以外にも、
・単に元気がない
・丸まって動かない
なども腹痛のサインのことがあります

 ━繰り返す嘔吐
食べていないのに黄色い胃液や泡を何度も吐くことがあります。

━下痢
黄色っぽい脂肪便や、時には血が混じった下痢をすることもあります。

 ━食欲不振・元気消失
急にご飯を食べなくなり、ぐったりと動かなくなる。

━発熱、脱水症状

▶重症化すると
・呼吸困難
・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
・ショック状態(虚脱、低体温、頻脈など)
に陥ることもあります。

●慢性膵炎

軽度な炎症が持続したり、急性膵炎を繰り返したりします。

◇慢性膵炎の典型的な症状

軽度の嘔吐や下痢が時々見られる。

食欲にムラがある、なんとなく元気がない。

徐々に体重が減少する。

慢性膵炎は
症状がはっきりしないことも多く、他の消化器疾患との区別が難しい場合があります
その分「静かなる進行」をすることがあり、飼い主さんが気づかないうちに徐々に膵機能が低下していくことも
定期的な健康診断での早期発見が重要!

━急性増悪
急性膵炎のような激しい症状を繰り返すこともあります。

膵炎を予防するためには? – 日常生活でできること

膵炎多くは、正確な原因は特定できない特発性膵炎
ですが、以下の点はリスクを高めると考えられており、予防のために重要です。

●【最重要】高脂肪食を避ける

脂肪分の多い食事は
▶膵臓からの消化酵素の分泌を過剰に刺激
▶膵炎の最大の引き金!

人間の食事
(特に揚げ物、肉の脂身、中華料理など)
のおすそ分けは絶対にやめましょう。
ドッグフードも脂肪分が高すぎないか確認しましょう。

●肥満の予防と解消

肥満は高脂血症を引き起こしやすく、膵炎のリスクを高めます。
適正体重を維持することが大切です。

●適切な食事管理

・決まった時間に
・決まった量の
・バランスの取れた
総合栄養食を与えることが基本です。
おやつの与えすぎにも注意し、与える場合は低脂肪のものを選びましょう。

●定期的な健康診断

血液検査で膵臓の数値
・特に犬膵特異的リパーゼ
 (cPLIやvLIPAなど)
・中性脂肪、コレステロール値
などをチェックすることで、異常の早期発見に繋がります。

膵炎や高脂血症の好発犬種
・ミニチュア・シュナウザー
・ヨークシャー・テリア
・コッカー・スパニエル
・ミニチュア・プードル
・シェットランド・シープドッグ
などは特に注意が必要です

●ストレス管理

直接的な原因となるかは明確ではありませんが、過度なストレスは
・免疫力の低下
・消化機能の不調
を招く可能性があるため、穏やかな生活環境を整えてあげることも大切です。

●基礎疾患の管理

・クッシング症候群
・甲状腺機能低下症
・糖尿病
・高脂血症
などの基礎疾患がある場合
それらの適切な治療と管理が膵炎予防にも繋がります。

●薬剤の慎重な使用

一部の薬剤
・特定の利尿剤
・高用量のステロイド剤
・一部の抗てんかん薬
・L-アスパラギナーゼなどの抗がん剤
膵炎を引き起こす可能性が報告されています。
これらの薬剤を使用する際は、獣医師とリスクについてよく話し合い、必要最小限の使用に留めることが重要です。

治療法や処方される薬の例 – 膵臓を休ませ、全身をサポート

膵炎の治療は
・膵臓の炎症を鎮め
・膵臓を休ませ
・脱水や電解質の異常を補正
・痛みをコントロール
・合併症を防ぐための対症療法
が中心となります。
特効薬は現在のところありません。

●入院管理
特に急性膵炎や重症例では、集中的な治療とモニタリングのために数日間の入院が必要となることが一般的です。

●輸液療法(点滴)
最も重要な治療の一つ。
・脱水状態を改善し
・電解質バランスを整え
・全身の循環を維持
これにより
・膵臓への血流を確保し
・炎症物質の希釈と排泄を促し
膵臓の回復を助けます。

●絶食・絶水(初期)
かつては膵臓を休ませるために数日間の絶食・絶水が推奨されました。
現在も嘔吐が激しい場合などには行われます。

最近では早期栄養サポート
つまり嘔吐がコントロールでき次第、できるだけ早期に少量ずつ水分や栄養補給を開始することが
・腸管粘膜のバリア機能の維持
・腸内細菌の異常増殖や体内移行の防止
・免疫力の維持
・そして早期回復に繋がる
という考え方が主流になりつつあります。
ただし、これは獣医師が個々の状態を判断して決定します

●痛み止め
膵炎は非常に強い痛みを伴うため、積極的な疼痛管理が不可欠です。

◇オピオイド系鎮痛薬
ブトルファノール、トラマドール、フェンタニル、モルヒネなど
中等度~重度の痛みに使用。

━副作用
眠気、ふらつき、便秘、呼吸抑制、吐き気、食欲不振。
食事量が減ることがあります。

◇非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
メロキシカム、カルプロフェン、フィロコキシブなど
炎症と痛みを抑えますが、消化管や腎臓への負担があるため、脱水時や消化器症状が強い急性期には慎重に使用されます。

━副作用
胃腸障害(嘔吐、下痢、消化管潰瘍、黒色便)、腎障害、肝障害。
空腹時を避け、食後の投与が推奨されることが多いです。
脱水時には使用を避けるか、慎重なモニタリングが必要です。

◇その他
ガバペンチン、アマンタジン、リドカイン持続点滴など
複数の鎮痛薬を組み合わせる
マルチモーダル鎮痛
により、各薬剤の副作用を抑えつつ、より効果的な疼痛管理を目指します。

●制吐剤(吐き気止め)
マロピタント・オンダンセトロン・メトクロプラミドなど
嘔吐をコントロールし、脱水や電解質異常の悪化を防ぎ、早期の経口摂取を可能にするために重要です。

━副作用
副作用は比較的少ないです
注射部位の痛み、まれにアレルギー反応。
嘔吐が治まれば食欲改善に繋がり、食事が摂りやすくなります。

●胃酸分泌抑制薬
H2ブロッカー・プロトンポンプ阻害薬など
・胃酸による膵臓への刺激を軽減する目的
・ストレスによる胃粘膜障害の予防
に使用されることがあります。

━副作用
長期使用により胃内pHが上昇
・消化能力の低下
・腸内細菌叢のバランスに影響を与える可能性
が指摘されています。

●抗生物質
・細菌感染が強く疑われる場合
・重症例で二次的な細菌感染を予防
などの目的で使用されることがありますが、全ての膵炎にルーチンで使用されるわけではありません。

━副作用
腸内細菌叢のバランスを崩し、下痢を引き起こすことがあります。
食欲不振の原因になることも。

●新鮮凍結血漿(FFP)の輸血
重症例で
・タンパク質分解酵素阻害物質の補充
・血液凝固因子の補給
・循環血液量の改善
・低アルブミン血症の改善
などを目的に行われることがあります。
効果については議論もありますが、救命の一つの選択肢です。

●低分子ヘパリン
播種性血管内凝固症候群
(DIC)という重篤な合併症の予防や治療のために使用されることがあります。

※播種性血管内凝固症候群
何らかの病気によって血液が固まりやすくなり、全身の細い血管の中で血液の塊(血栓)が多発してしまう病気

●ステロイド剤
一般的な細菌感染や薬剤誘発性ではない膵炎の場合
・炎症を強力に抑える目的で
・獣医師の慎重な判断のもと
・短期間使用される
ことがあります。
特に
・自己免疫が関与の可能性のある慢性膵炎
・重度の全身性炎症反応症候群(SIRS)
を伴う場合など。
ですが、使用には賛否両論あります。

━副作用
・多飲多尿
・食欲増進(膵炎の食事療法中はコントロールが難しい場合も)
・体重増加
・血糖値上昇
・易感染性(免疫抑制)
・消化管潰瘍のリスク
(特にNSAIDsとの併用は禁忌)
長期使用で
・医原性クッシング症候群
・糖尿病
のリスク
食事の嗜好性が変わることも。

●消化酵素サプリメント
パンクレリパーゼ、パンクレアチンなど
・膵臓の機能が低下し、消化吸収不良が見られる慢性膵炎
・膵外分泌不全(EPI)を併発している場合
消化を助けるために生涯にわたり使用されます。

━副作用
通常は安全性が高いです
が、まれに口内炎や下痢、高用量で高尿酸血症のリスク。
フードによく混ぜて与えます。

●薬と食事との兼ね合い全般

嘔吐が治まり食事が開始されたら、多くの経口薬は
・食事と一緒に
・または食直後に与える
ことで、胃腸への刺激を軽減できます。
ただし、薬剤によっては空腹時投与が指示される場合もあるため、必ず獣医師の指示に従ってください。
絶食・絶水期間中は、必要な薬剤は注射や点滴で投与されます。

食事で気をつける点・療法食の内容 – これが一番大事!

膵炎の治療と再発予防において、食事管理は最も重要な柱の一つです。

●【絶対厳守】超低脂肪食

脂肪は膵臓を最も強く刺激する栄養素。
急性期はもちろん、回復後も生涯にわたり、徹底した低脂肪食を続ける必要があります。

◇目標脂肪含有量(乾物重量あたり)
・急性期や重症例では5-8%以下
・維持期でも10-15%以下
を目指すことが多いです。
・犬種や個体差
・併発疾患
によって目標値は異なります。
ミニチュア・シュナウザー
などはより厳格な脂肪制限が必要な場合があります。

●高消化性で良質なタンパク質

膵臓の負担を軽減しつつ、体組織の修復に必要なアミノ酸を供給が必要。
消化しやすく質の高いタンパク質
鶏ささみ鶏胸肉
・タラなどの白身魚
卵白(加熱)
・低脂肪カッテージチーズ
などを適量摂取します。

●適度な炭水化物

消化の良い炭水化物
玄米ジャガイモカボチャなど
をエネルギー源として利用します。
ヒッポのごはんでは発酵発芽玄米甘酒を使用することもあります。

●適度な食物繊維

消化管の健康維持に役立ちますが、過剰な不溶性食物繊維は消化吸収を妨げる可能性もあるため、バランスが重要です。

●療法食の活用

これらの条件を満たすように栄養バランスが調整された犬用の膵炎療法食が各社から販売されています。
獣医師の指示に従い、愛犬に合ったものを選びましょう。
もちろんヒッポのごはんでも調整レシピでご提供しています。

例(おすすめしているのではないです)
・ヒルズ プリスクリプション・ダイエット i/d Low Fat
・ロイヤルカナン 消化器サポート
・ドクターズケア 犬用 ストマックケア
・スペシフィック CID-LF 犬用 低pH スタート&グロース

◇療法食の内容
脂肪含有量が極めて低く抑えられ、高消化性の原材料が使用されています。
また、オメガ3脂肪酸や抗酸化物質が強化されているもの、消化管の健康をサポートするプレバイオティクスなどが配合されているものもあります。

●食事の与え方
1回の食事量を減らし、食事回数を増やす(1日3~4回など)ことで、消化器への負担を軽減できます。

●おやつは原則禁止
どうしてもの場合は超低脂肪のものをごく少量。
ジャーキー、チーズ、ソーセージ、ビスケットなど
市販の多くのおやつは高脂肪です。
与える場合は
・療法食のドライフードを数粒
・茹でた野菜
ブロッコリーニンジンなど少量)
・専用の低脂肪トリーツ
などを獣医師に相談の上で選びましょう。

●人間の食べ物は絶対に与えない。

●手作り食の場合
非常に厳密な栄養計算と知識が必要です。
必ず栄養学に詳しい獣医師の指導のもとで行い、定期的な栄養バランスのチェックを受けてください。
自己流は極めて危険です。
ヒッポのごはんでは無料でレシピ相談もできます。

膵炎で強化すべき栄養素(獣医師・専門家の判断のもとで)

オメガ3脂肪酸(EPA、DHA)
魚油などに含まれ、抗炎症作用が期待されます。
・炎症を抑制
・膵炎の回復を助ける
可能性があります。
ただし、脂肪の一種なので、添加量や製品の選択は獣医師の指示に従い、非常に慎重に行う必要があります。
高純度でリン脂質型のものが比較的安全性が高いとされます。

●ビタミンB群(特にビタミンB12)
慢性的な消化器疾患では、吸収不良によりビタミンB12が欠乏しやすくなります
・食欲不振
・元気消失
・体重減少
などに関与し、補充することでQOL(生活の質)の改善が期待できます。
定期的な注射や経口サプリメントで補給します。

●抗酸化物質
・ビタミンE
・ビタミンC
セレンなど
膵炎による強い炎症は、体内で大量の活性酸素を発生させ、酸化ストレスを引き起こします。
これらの抗酸化物質は
・細胞のダメージを軽減し
・回復をサポートする可能性があります。
※ただし、ビタミンCは犬自身が体内で合成できるため、過剰な補給は必ずしも必要ではありません

●消化酵素製剤
慢性膵炎や膵外分泌不全(EPI)を併発し、消化吸収能力が著しく低下している場合に、食物の消化を助けるために処方されます。
これにより
・栄養状態の改善
・下痢の軽減
・体重増加
などが期待できます。

膵炎で控えるべき栄養素 – これだけは守って!

●【最重要】脂肪
あらゆる種類の脂肪。
特に動物性油脂など飽和脂肪酸。

●質の悪いタンパク質
消化が悪く消化器に負担をかけます。

●高繊維食
特に不溶性繊維が過剰なもの
・消化吸収を妨げたり
・便秘を引き起こしたり
する可能性があります。
適度なバランスが重要。

●単純炭水化物
砂糖、お菓子などは 肥満や高血糖のリスク。

●乳製品
・牛乳
・チーズ
など高脂肪のものは
・下痢
・脂肪過多
の原因に。
低脂肪カッテージチーズは例外的に使用可な場合も。

●人間の残り物、加工食品、香辛料の強いもの、玉ねぎ、チョコレートなど犬に有害なもの全般。

膵炎の治療費の例 – あくまで目安です

犬の膵炎の治療費は
・重症度
・治療期間
・入院の有無
・合併症の有無
・動物病院の規模や地域
などによって大きく変動します。
以下はあくまで一般的な目安として参考にしてください。

●軽症
通院治療のみ、数日~1週間程度

◇1日あたり:
5,000円~20,000円程度
(診察料、血液検査、皮下輸液、注射(制吐剤・鎮痛剤など)、内服薬など)

◇総額:
数万円程度

●中等症~重症
入院治療が必要、3日~1週間程度の入院

◇入院1日あたり:
20,000円~80,000円程度
(入院費、静脈輸液、各種検査(血液検査、超音波検査など頻回に)、各種注射薬、酸素吸入、疼痛管理、栄養管理など)

◇初期集中治療期間(最初の数日間)は特に高額になる傾向があります。

◇総額:
10万円~50万円程度。
・合併症(DIC、腎不全、糖尿病など)を併発
・手術が必要
・入院が長期化
では100万円を超えるケースも珍しくありません。

●慢性膵炎の維持管理
生涯にわたる場合も

◇月額:
数千円~数万円程度
(定期的な診察・血液検査、療法食代、内服薬(消化酵素、ビタミン剤など)代)

※ペット保険に加入している場合は、補償内容に応じて自己負担額を軽減できます。
膵炎は
・再発しやすく
・治療が長期にわたる
こともあるため、保険の有用性が高い疾患の一つと言えます。
ただし、加入前に発症していた場合は補償対象外となることがほとんどです。

その他、愛犬が膵炎になったときにしてあげられること

愛犬が膵炎と診断されたら、飼い主さんは不安でいっぱいになると思いますが、前向きにケアに取り組むことが大切です。

●獣医師の指示を守る
・食事療法
・投薬
・通院スケジュールなど
獣医師の指示を自己判断で変更したり中断したりしないこと。
疑問があれば遠慮なく質問しましょう。
ヒッポのごはんでも相談は受け付けています。

●徹底した食事管理
家族全員で情報を共有し、誰か一人がこっそりおやつを与えたりしないようにルールを徹底します。
「かわいそうだから」という気持ちは禁物です。

●安静な環境の提供
特に急性期や体調が悪い時は、静かで落ち着ける場所でゆっくり休ませてあげましょう。
散歩も体調に合わせて無理のない範囲で。

●ストレスの軽減
・穏やかな声かけ
・優しいスキンシップ
で安心感を与えましょう。
ただし、お腹を痛がっている時は無理に触らないように。

●日々の症状の注意深い観察と記録:

□嘔吐の有無、回数、内容物
□便の状態
(形、色、量、脂肪便や血便の有無)
□食欲、飲水量
□元気、活動量
□腹痛のサイン
(祈りのポーズ、お腹を丸める、震え、触られるのを嫌がるなど)
□体重の変化

これらの情報を記録しておくと、獣医師とのコミュニケーションがスムーズになり、治療方針の決定にも役立ちます。

●定期的な通院と検査の継続
症状が落ち着いても、膵炎は再発しやすい病気です。
定期的な健康チェック
・血液検査
・超音波検査など
を受け、再発の兆候を早期に捉えることが重要です。

●体重管理の徹底
肥満は膵炎の大きなリスク因子です。
適正体重を維持するように心がけましょう。

●口腔ケア
嘔吐が多いと口腔内環境が悪化しやすい
です。
可能な範囲で歯磨きなどのケアも行いましょう。

●愛情と根気を持ったケア
膵炎の治療や管理は長期にわたることがあります。
愛犬を
・励まし
・寄り添い
・根気強く
ケアを続けてあげてください。

●飼い主さん自身のメンタルケア
愛犬の闘病は
・精神的にも
・経済的にも
負担が大きいものです。
一人で抱え込まず
・家族や獣医師
・信頼できる友人
・ヒッポのごはん
に相談したり、同じ病気の犬の飼い主さんのコミュニティなどで情報を交換したりすることも支えになるかもしれません。

その他、膵炎についてまとめ

●診断の難しさと特異的検査
膵炎の症状は非特異的なことが多い
=他の消化器疾患との鑑別が重要。
血液検査では、
・犬膵特異的リパーゼ
(cPLIやSpec cPL、vLIPAなど)
の測定が、従来の
・血清アミラーゼ
・リパーゼ
よりも膵炎診断の特異性が高いとされています。

超音波検査は膵臓の状態を視覚的に評価するのに非常に有用。
ですが、検査者の
・技術
・経験
に左右される側面もあります。
CT検査が用いられることもあります。

●高脂血症との密接な関係
特にミニチュア・シュナウザー
遺伝的に高トリグリセリド血症(中性脂肪が高い状態)になりやすく、これが膵炎の強力なリスク因子となります。
高脂血症のコントロールが膵炎予防・再発防止に不可欠です。

●糖尿病・膵外分泌不全(EPI)の関連
重度の急性膵炎や慢性膵炎を繰り返すことで、膵臓の組織が広範囲にダメージを受けると
▶インスリンを分泌するランゲルハンス島が破壊されて糖尿病を続発
▷消化酵素を産生する腺房細胞が減少して、膵外分泌不全(EPI)を発症
したりすることがあります。
これらは生涯にわたる管理が必要となります。

膵炎の最新の治療アプローチの動向

●早期経腸栄養
前述の通り、嘔吐がコントロールでき次第、早期の栄養補給が推奨される傾向にあります。

●血漿交換
・一部の重症例
・背景に重度な高脂血症
などがある場合、血液中から過剰な脂質や炎症性物質を除去する治療法として、限られた施設で試みられています。

●新しい薬剤の研究
・炎症をより効果的に抑制する薬剤
・膵臓の線維化を抑制する薬剤
などの研究が進められています。

●「無症候性膵炎」の存在
明確な臨床症状を示さないものの
特に慢性膵炎で
・血液検査
・画像検査
で膵炎の所見が見られるケースもあります。
これが将来的に急性増悪したり、他の疾患に影響したりする可能性も考慮されます。

犬の膵炎は
・飼い主さん
・愛犬
・獣医師
がチームとなって向き合っていく必要のある病気です。
正しい知識を持ち、日々のケアを丁寧に行うことで、愛犬のQOLを維持し、穏やかな時間を長く過ごせるようにサポートしてあげましょう。

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